仕事のプロ

2017.04.12

日本的な人材の流動化を促進する企業間『レンタル移籍』〈前編〉

企業の課題を解決し、社員の成長を促す新たな出向スタイル

会社に在籍しながら、期間を定めて他社のプロジェクトなどに参加できる。企業間の『レンタル移籍』サービスを手がけている株式会社ローンディール。政府主導により「働き方改革」が進められるなか、今後加速していく人材の流動化の一役を担ったサービスとしても注目を集めている。同社代表取締役社長の原田未来さんに、サービスの仕組みや目的などについてお話を伺った。

取引関係のない企業同士、
オープンな出向制度で人材を育成できる

サッカーの『レンタル移籍』を知っているだろうか? 所属チームにいながらにして、他のチームに一定期間移籍して、自らの実力を発揮することができる制度である。このような仕組みをビジネスに導入し、企業間のレンタル移籍サービスをスタートさせたのが株式会社ローンディールだ。
 
同社の代表取締役社長 原田さんによると、このサービスは「オープンな出向制度」だという。
「これまでの出向は、資本関係があったり、仕事で取引があったりと、何らかのつながりのある企業間で行われるものでした。その点、当社のサービスは、取引関係のなかった企業同士での人材交流を可能にしました。私たちはレンタル移籍する人材と受入企業とのマッチングだけでなく、レンタル期間中の人材のサポートやメンタルケアにも力を入れています」
 
原田さんは、出向させたいという企業側の目的やレンタル移籍(出向)する人材の要望を徹底的にヒアリングし、そのニーズに合致した受入企業を選出し、最適なマッチングを実施しているという。
 
 

転職で得た知識や視野が
前職であったなら・・・という「後悔」がきっかけに

かつては、小売業者向け卸サイトや決済サービスを展開するITベンチャー企業に在籍していた原田さん。アルバイトで入社して、次々といろんな仕事を任され、26歳で営業部長に昇進。その後、同社で東証マザーズ上場も経験して、順風満帆に過ごしていたが、あるとき「このままでいいのか?」という違和感を覚えた。会社の成長とともに、役職が与えられていくものの、自分自身の成長スピードが鈍っていることに焦りを感じたという。
 
「会社を辞めたいわけではないですが、外の世界を見てみたい・・・そんなことを漠然と考えていたときに、当時の社長に冗談半分で『原田を、一度商社に出向させて修行を積ませてやりたい』と言われたことがあって、それができるならやってみたいと思いました。早くから部長職に就いていたので、商談の相手も年上ばかりで、そんな人たちと、もし同じ会社で仕事をしたら、私のこのスキルが本当に通用するのだろうか。そんな思いにかられ、次第に“井の中の蛙”じゃないかという不安が募っていきました」
 
しかし一人悩んでいても状況は何も変わらない。まずは環境を変えるために、大手のベンチャー企業に36歳で転職を決意。
「転職してみると、思った以上に得られる知識の幅・視野の拡がりがありました。我流だったマネジメントをイチから学び直せたのも大きかったです。そこで一番痛感したのは1社目にいたときに、今のこの知識や視野をもっていたら・・・ということでした。前職の社長にもいろんなことを提案できたし、いま考えても、簡単に職を捨ててしまったことが悔やまれます」
 
 
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そして、原田さんの脳裏によぎったのが、社長の言った“出向”という言葉だった。1つの企業に在籍しながらも、異なる環境や多様な考えに触れる機会があることで、個人の成長や働き方、そして企業の成長にも寄与できるのではないかと思ったのが、このサービスを立ち上げたきっかけだった。
 
 

原田 未来(Mirai Harada)

株式会社ローンディール代表取締役社長。小売業者向け卸サイトを展開するITベンチャー企業にアルバイトとして入社し、部長まで昇進。その後、さらなる成長を目指して大手ベンチャー企業に転職し、新規事業に携わる。しかし、自身のキャリア構築を通じて、オープンな人材交流の場の必要性を感じ、2015年9月に「レンタル移籍」サービスをスタート。現在は、参加企業の拡大や出向者の成長のサポートに注力している。新たな働き方・人材開発の手法として注目を集めており、セミナーやイベントなどでの登壇も多数。

文/西谷忠和 撮影/石河正武
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