組織の力

2017.04.05

NTTコミュニケーションズのベテラン社員活性化施策〈後編〉

「ワクワクする目標」があれば行動が変わる!

NTTコミュニケーションズ株式会社では、中高年の活性化を意識した取り組みの一環で、50歳の非管理者の社員を対象とした面談を行い、ベテラン社員のモチベーション向上に成功した。担当者であるヒューマンリソース部 人事・人材開発部門の浅井公一課長に、面談にあたっての心がけや、ベテラン社員がどう変化したかなどをお聞きした。

事前の「聞き込み」で
対象者の背景をインプット

NTTコミュニケーションズでは2015年、ベテラン社員の実態調査を目的に、50歳の非管理者の社員190人を対象とした面談を行った。たった一人で全員を担当すると決心した浅井氏は、面談開始5日目にして厚い壁にぶつかった。ある対象者に60歳までのキャリアビジョンについてアドバイスしようとしたところ、その男性社員は「あなたに何がわかるんですか!」と声を荒げたのだ。しかし浅井氏は、この面談から学ぶところは大きかったという。
 
「なぜこんなに怒るんだろう? いくら考えてみても答えは見つかりませんでした。でも、それは当然だったのです。私は彼の人柄や職場環境、背景について何も知らないわけですから。面談する相手についてある程度知識がなければ、輝くきっかけを提案することなどできない、と気づいた瞬間でした」
 
このできごとをきっかけに、浅井氏は面談の方法を大きく変えた。面談対象者が決まったら、まずその社員の上司に会い、家族構成や趣味、出社時間、介護の状況などを詳しく聞いた。細かい情報を仕入れてから面談を行うことで、より対象者にフィットするアドバイスが可能になった。実際の面談でも対象者の実像が見えないと感じた場合は、その人と同じ職場の同僚や派遣社員にも話を聞いた。上司も本人も気づいていなかった対象者の強みが、一緒に働くスタッフの証言から明らかになることもあった。
 
 

上司に働きかけることで
社内にみられるミスマッチ改善も

上司への事前聞き込みというプロセスを加えたことで、面談人数は当初予定していた190人から大幅に増えた。さらに51歳以上の社員にも希望を募ったため、最終的に浅井氏が面談した社員数は2015年5月から2016年2月までの10か月間で500人に上った。1人に費やす時間は、平均すると約40分間。基本は30分の設定だが、的確な目標設定ができている社員との面談は5分程度で終える。逆に、ワクワクする目標が見つかるまで複数回にわたって席を設けることもあった。
 
浅井氏が大切にしたのは、「面談をマニュアル化しない」ことだという。対象者の背景について事前に知ったうえで、面談中は相手の表情や声のトーンをみながら質問し、アドバイスをしていく。そのため、定型の質問事項も決まっていない。時には、アドバイスの材料として人事担当ならではの情報を明かすこともあった。
 
面談人数が200人を超えた頃から、「その人が本当はどう考えているのか」「その人にとって何が幸せか」が見えるようになってきたそうだ。
「例えばある社員は、『グローバル時代に向けて、週末にTOEICの学習をする』という目標を設定しました。しかし、彼の言葉にはどこか無理をしている響きがあり、これは本人にとってワクワクする目標ではないと感じました。そこで、彼が少し肥満気味だったこともあり『語学力を伸ばすより、65歳まで健康で働けるベースをつくった方がいい。週末は、メタボ解消のためにウォーキングを始めてみたら?』と勧めてみました。予想通りその社員は、その方が頑張れそうだ、と笑顔を見せました」
 
ベテラン社員への面談を重ねていくなかで、浅井氏は「約7割の社員は高いモチベーションを維持できている」と感じたという。ただし気になったのは、モチベーションが高くても職場で活躍できているとは限らないことだった。
 
 
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「本人がいくら自分の得意分野や専門分野を活かして仕事をしても、実際に上司が望んでいる仕事とは違う、というケースが多かったですね。この齟齬はコミュニケーション不足によって起こっているのではないかと感じたので、食い違いを埋めるきっかけをつくれればと考えました。そこで、面談の内容と共に『あなたの部下には、こんな接し方をすると響くのではないか』といった提案を所感としてまとめ、上司に渡しました。面談で今後の目標を設定したタイミングで、上司から今までと違う接し方をされれば、対象者の行動や意欲に確かな変化が生まれやすいのではないでしょうか」
 
 
文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ
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