リサーチ

2017.02.08

女性がいるほど労働時間は適正化する?

女性社員の割合で見る長時間労働問題

2016年7月に発表された、長時間労働に関する調査結果の中に、労働時間と女性社員の割合に関する興味深いデータがあった。長時間労働を捨て、労働生産性を高めるカギは女性社員が握っているのかもしれない。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が、全国(農林漁業、鉱業、公務を除く)における従業員規模100人以上の企業と、その社員を対象に調査したところ、年間総実労働時間の今後の方向性について、「短縮していく」とする企業も45.7%と半数弱みられ、3年前より増加傾向にあることが判明した。
 
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長時間労働の要因となるのが、本来の労働時間以外の、残業などの時間であるが、調査結果では、正社員の過去1年間における「1ヶ月当たりの所定外労働時間(就業規則による労働時間を超過した時間)の長さ」は平均24.5時間。日々、残業が発生するのがほぼ当たり前のような状況だ。「1ヶ月の所定外労働時間」が45、60、80時間を超えた正社員の人数割合が高いのは、「建設業」や「運輸業、郵便業」「学術研究、専門・技術サービス業」で、当該正社員の人数割合は「社員数300人以下」など小規模ほど多くなっている。
 
ところでこの所定外労働時間について、正社員に占める女性の割合別にみると興味深い傾向が表れた。女性比率が低い企業ほど「1ヶ月の所定外労働時間(平均)」が長くなっているのだ。また、「1ヶ月の所定外労働時間」が45、60、80時間を超えた正社員がいた企業割合、同企業における当該正社員の人数割合とも、女性比率が低下するほど高くなっているという。
 
さらに、内閣府が子ども・子育て支援新制度サイトで発表している、少子化危機突破タスクフォース(第2期)政策推進チームの渥美由喜氏による資料「時間外労働が女性社員の出生行動に与える影響」を見ると、時間外労働(法定労働時間で見た残業時間の累積)が多い会社ほど、正社員に占める女性正社員の割合、子持ち正社員に占める子持ち女性正社員の割合がいずれも低い。
 
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「時間外労働が女性社員の出生行動に与える影響」

大手企業約400社の2012年度のデータをもとに、渥美由喜氏が試算。※「子持ち正社員」とは、小6以下の子どもを持つ正社員を指す。

 

確かに、子育てをする女性社員には、保育園へのお迎えなどのために時短勤務したり、フルタイム勤務でも残業は難しい、という人が多い。そのような女性が増えれば、会社全体での残業平均時間が減るのは当然のことだ。また、子育て支援が十分ではなく、長時間労働が当たり前な風土の企業では、子育てをする女性社員は働きづらく退社してしまうため「長時間労働の会社=女性社員が少ない」という現象も、納得のいく結果だ。
 
だが見方を変えれば、家庭を持ち、時短勤務で働く女性が社内にたくさんいるような環境になれば、企業全体で「早く帰る」文化を醸成することに繋がるのではないだろうか。また、子育てを重視する社内のムードが、男性の育児参加も推進し、そのためのより短時間で効率的な働き方を考えるきかっけにもなり得る。
 
長時間労働の風土を是正したいと考えている企業は、まずは女性社員が家庭との両立でストレスなく働けているかというところから、見直してみると良いかもしれない。
 
 
(出典)独立行政法人労働政策研究・研修機構「「労働時間管理と効率的な働き方に関する調査」(企業調査)結果」「「労働時間や働き方のニーズに関する調査」(労働者調査)結果」内閣府「少子化危機突破タスクフォース(第2期)政策推進チーム 第4回 議事次第」資料「時間外労働が女性社員の出生行動に与える影響」(作成・渥美由喜 2014年4月7日)をもとに作成
作成/MANA-Biz編集部