リサーチ

2016.12.02

未来に向け、働き方の潮流が変化

若手社員の仕事観は脱都市・脱組織・脱金銭主義志向?

2030年には会社の中枢を担うことになる、現在30歳前後の若手社員。彼らのキャリア意識調査では「地方、海外志向」、「脱組織志向」、「金銭的報酬以外の対価志向」という3つの大きな変化が明らかになった。

若手社員のキャリア意識における第1の特徴は、都市部を離れ、地方あるいは海外で働くことを希望する人が増えていることだ。株式会社リクルートマネジメントソリューションズの研究開発部門「組織行動研究所」が発表した調査研究によれば、この10年ほどでUターン、Iターン希望者は倍増しており、25~34歳男性正社員に限れば、約40%がUターンを、約20%がIターンを希望している現状がある。その理由として「地域貢献のため」「リモートワーク環境の急速な進化で離れた場所での仕事も支障がない」というものが増えている。また、日本の外で働くことを視野に入れる人も増えており、「どんな国・地域でも働きたい」という人は今や約30%にも上っている。ITやデザインなどの分野ではすでにクラウドワーク化が進んでおり、会社にいなくても仕事を充分進められるようになってきている。
 
 
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またそれに伴い、「脱組織」の流れも生まれてきている。30歳前後の若手ホワイトカラー男性のうち、約70%が「組織にしばられずに、自由に仕事をしたい」と回答している。また、起業・開業・独立希望者のうち、組織を持たずクラウドソーシングなどによって単発の仕事ごとに契約を交わすような「フリーランス」として独立を希望する割合が10年で約20%増加しており、今や30%にまで上っている。
 
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その理由としては、リモートワーク・クラウドワークの普及の他に、コワーキングスペースやSNSなどのインフラが整い、個人と個人、個人と組織がつながりやすくなっていることがある。また、株式会社マイナビが2016年4月入社の新入社員を対象に調査した「2016年マイナビ新入社員意識調査」によれば、「プライベート優先」「どちらかといえばプライベート優先」と回答したプライベート優先派が過去最高の56.5%となったが、やはり個人の時間を作るためにフレキシブルな勤務形態が可能なフリーランスを志望する人が多いのだろう。
 
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3つ目の変化は、「金銭以外の報酬を求める」ことだ。働く理由の第1位が金銭であることは若手社員も他の世代と変わりはないが、その一方で注目したいのは「金銭的な報酬を得る必要がなくなったとしても、なんらかの仕事を続けたい」人も70%近くいることだ。
 
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さらに「市場価値を高め競争社会を勝ち抜く」よりも、「競争ではなく自分なりの幸せを目指す」人の方が、約2倍も多い。先に挙げた「2016年マイナビ新入社員意識調査」では、若い世代で「仕事を通じて叶えたい夢がない」など夢と仕事を切り離して考える人や、仕事で重要なことについて「楽しさ」を優先する人が増えているデータが出ているが、そのことともリンクする。
 
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「社会貢献」への意欲が、若者を中心に高まっていることも特徴的だ。仕事を通しての目標が、出世から自分なりの幸せへと変わってきている傾向が見られる。
 
 もはや年功序列で誰もが課長・部長になれる時代ではなく、出世競争をしなくなる人も多くなる。相手からの感謝や仕事への手応え、生活やコミュニティの充実などにまつわる対価を重視する人が出てきてもおかしくない。この変化に対応して、企業も変わらなくてはならない。優秀な若手人材を確保するためには、「リモートワーク」「個人志向」「対価の多様化」を踏まえて、仕事・職場・企業の仕事方法やあり方を考えなおし、企業もより多様化する必要があるだろう。
 
 
(出典)株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「2030 Work Style Project」調査・レポート「2030年、個人の「働く」はどうなるか 新たな「働く」ストーリーの萌芽を捉える」、株式会社マイナビ「2016年マイナビ新入社員意識調査」をもとに作成
 
作成/MANA-Biz編集部