組織の力

2016.08.03

今を生き抜く"強い組織"を目指す〈中編〉

組織を高める三大要素は目的、貢献意識、コミュニケーション

ビジネスパーソンの多くは何らかの組織に属し、その組織の利益のために何らかの役割を果たしていることだろう。昨今は大企業の内部統制や不正隠蔽が問題になるなど、企業組織とはどうあるべきかについて再考を迫られるシーンも多い。高い組織力を構築・維持するために、いま組織に何が求められているのだろうか。経営組織論の専門家・首都大学東京大学院社会科学研究科の高尾義明教授に伺った。

理念が組織の隅々にまで
行き渡っている企業は、成功する

明確でコミットできる目的が求められる今の時代は、カリスマ型・ビジョン型の経営者が多く、彼らが描き出すビジョンは社員の心をつかんでいる。しかし、たとえカリスマ的なリーダーがいなくとも、各社が掲げる経営理念や企業使命には「目的の力」があり、貢献意欲を高めるモチベーター(モチベーションの源泉)になりえると、高尾教授は言う。
 
たとえば、花王グループは、1887年の創業以来、「人々の豊かな生活文化の実現に貢献」を使命に掲げてきた。現在は『花王ウェイ』という企業理念をうたっているが、時代に合わせて表現は変えてきたものの、使命自体は130年あまりにわたり一貫している。
 
「理念や使命をモチベーターにするためには、組織全体に浸透させ、共有することが大切です。一貫した企業理念を貫く花王グループをはじめ、稲盛和夫氏が再建したJALや、スタッフの教育に力を入れているスターバックスなどの事例を見ると、理念や使命が組織の隅々にまで行き渡っている企業というのは、社員一人ひとりの貢献意欲が高く、同じ目的に向かう者同士の円滑なコミュニケーションが成立しており、組織として成功していると感じます」
 
続く後編では、組織において中間管理職(マネージャー)やチームリーダーに求められること、さらに、今の時代を生き抜く組織になるために必要なことについて、引き続き高尾教授に伺う。 
 
 
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高尾 義明(Takao Yoshiaki)

首都大学東京大学院社会科学研究科経営学専攻教授。専門は経営組織論。京都大学教育学部を卒業後、神戸製鋼所に就職し、経営企画スタッフとして4年間勤務する。同社を休職して京都大学大学院経済学研究科修士課程に入学し、経営学を学び始める。博士課程への進学を機に同社を退職し、組織論研究者への道に専念。九州国際大学経済学部専任講師、流通科学大学情報学部専任講師・助教授を経て、2007年に首都大学東京大学院社会科学研究科経営学専攻准教授となり、2009年より現職。その他、京都大学経営管理大学院京セラ経営哲学寄附講座客員教授、University of California, BerkeleyにてVisiting Scholarも歴任している。

文/笹原風花 写真/石河正武