組織の力

2016.07.26

今を生き抜く"強い組織"を目指す〈前編〉

『スーパー戦隊シリーズ』から読み解く時代の変化

予測不可能な時代を生き抜く “強い組織” とは? いま、企業人に何が求められているのか? そんな問いからスタートした3回連載企画。前編では、“強いチーム” の代表であるスーパー戦隊にヒントを得ようと、『スーパー戦隊シリーズ』の初代プロデューサーを務め、40年以上にわたりスーパー戦隊と共に歩んできた東映株式会社テレビ事業部門エグゼクティブ・プロデューサー 顧問の鈴木武幸さんのもとを訪れた。そして、時代による組織のリーダー像やチーム編成の変化を探るべく、各スーパー戦隊がいかに世相を反映してきたのかについて伺った。

個性を生かしてお互いを補い合い、
チームとして一つになれるのが “5”

1975年放映の『秘密戦隊ゴレンジャー』以来、40年以上にわたり少年少女の心をつかんできたスーパー戦隊シリーズ。ゴレンジャーをはじめ、『電撃戦隊チェンジマン』(1985年放映)、『地球戦隊ファイブマン』(1990年放映)など、幼少期に憧れた人も多いことだろう。
初代『秘密戦隊ゴレンジャー』は、リーダーのアカレンジャーをはじめ、アオレンジャー、キレンジャー、モモレンジャー、ミドレンジャーの5名によるチーム編成で、以後もシリーズのほとんどが「レッドがリーダーで5名チーム」という構成になっている。

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現在放送中『動物戦隊ジュウオウジャー』(テレビ朝日系)のジュウオウイーグル(レッド)を手に持ち、説明をする鈴木顧問

「リーダーはいつの時代も燃える男であり、やっぱり赤なんです。立ち位置的にセンターが必要なため奇数なのですが、3でも7でもなく5がちょうどいい。実は、『太陽戦隊サンバルカン』(1981年放映)では3名にしてみたことがあるのですが、チームと呼ぶには少なすぎました。でも、7名では多すぎる。5名というのが、それぞれの個性が立ちつつ、足りないところを補い合い、チームとして一つになれる最適な数字なのです」

絶対的な“強いリーダー”から
調整役の“友だち感覚のリーダー”へ

リーダー(レッド)のチームにおける存在も、時代と共に変化してきた。シリーズ初期の1970年代後半〜1980年代前半は、チームを率いる“リーダーらしいリーダー”だったのが、バブル期・バブル崩壊を経て、次第に“友だち感覚のリーダー”へと変わっていった。情熱的な“燃える男”であることには変わりないのだが、決断力や統率力に優れ、戦闘能力も高く、絶対的な強さを誇っていたかつての完璧なリーダーとは異なり、近年はとくに、チームの間をまとめる調整役的な要素が強くなっている。

子どもたちに向けて常に半歩先を見せることを意識し、キャラクター設定やストーリーを考案していたという鈴木顧問。現代に比べると大勢の“群れ”の中で存在感を発揮せねばならなかった当時の子どもたちにとって、かつての強いリーダーは憧れのリーダー像だったのかもしれない。

一方、最近の“友だち感覚のリーダー”は、少子化を反映していると、鈴木顧問は言う。一人っ子が増え、外遊びの機会も少なくなり、子どもたちにとってスーパー戦隊ヒーローたちは、「仲間と力を合わせて一つの目的に向かうことの楽しさ」を見せてくれるものとなったのだ。

チームのメンバーは、クールなタイプ(熱血タイプのリーダーとは相反するが、いざというときにはリーダーを支える)、頭脳明晰タイプ(すぐに熱くなるリーダーを冷静に支える)、場を和ませるタイプ(いつもふざけているが、いざというときは活躍する)などとある程度は決まっており、これに女性キャラが加わる、というのが一つのパターンだ。

「かつてはリーダーが言うことは絶対的でしたが、時を経るにつれてメンバーの存在感も個性も強くなり、同じ立場で発言をしたり、ときにはリーダーに反論したりリーダーの頼りない部分をサポートしたりと、変わってきました。リーダーが軟弱になったようにも見えますが、リーダーも含めてフランクに話し合い、チーム全員で問題を解決していこうという時代の流れなのかなと感じています」

鈴木 武幸(Suzuki Takeyuki)

東映株式会社テレビ事業部門エクゼクティブ・プロデューサー 顧問。1968年東映に入社。テレビ部にてプロデューサーを務める。ドラマからアニメ、特撮作品までプロデュース作品は多岐にわたる。なかでも『スーパー戦隊シリーズ』には立ち上げから携わり、同シリーズを長期ヒット作品へと育て上げた。その後、テレビ部の総責任者を経て、常務取締役、専務取締役などを務め、2016年6月には取締役を退任し、顧問に就任。現場を離れた現在も、東映作品を見守り続けている。

文/笹原風花、撮影/曳野若菜