組織の力

2016.07.08

スポーツ×ビジネス Jリーグが率先する新たな挑戦!

Jリーグマネージャー育成カリキュラムにみるリーダーの資質

2015年、公益財団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は、立命館大学と連携して人材開発事業「Jリーグヒューマンキャピタル(JHC)」を立ち上げ、サッカーをはじめ日本のプロスポーツ界を担う人材の育成に本格的に着手。Jリーグヒューマンキャピタルグループマネージャーの中村聡さんに、スポーツ界におけるビジネスの課題や求められるスキル・人材像について伺った。

経営幹部候補生を広く募り
ゼロから育成する

このように、Jリーグのサッカークラブの経営には、一般企業の経営スキルに加えて、地域振興を担う公共財としての位置づけを理解し、スポーツとビジネスを融合していく手腕が求められる。しかし、実際にそのような能力を兼ね備えた人材は多くはなかった。
 
「24年前にサッカーがプロスポーツになり、選手や監督、コーチなどプレーにかかわる人材は“プロ”になりましたが、クラブの経営陣は親会社からの出向者が中心で、アマチュアのままでした。そのうち、経営難に陥るクラブやつぶれてしまうクラブが出てきて、Jリーグとしても危機感を持ち、クラブ経営を担う人材育成の必要性を強く感じるようになったのです」
 
そこでJリーグでは、1997年より各クラブの社長に向けた「ゼネラルマネージャー講座(GM講座)」を開講。研修サービス会社に委託して、マネジメントや経営について学ぶ研修を行った。本講座は2007年まで続けられたが、さらに踏み込み、サッカー業界に特化した内容の講座にするべく、中村さんが中心になって2008年にリニューアル。月1回・18か月間の講座で、クラブ経営を担う人材の育成に当たった。一定の成果を挙げたことから、講座は2011年で一時休止。
2014年に、(株)リクルート出身で人材開発・育成や組織改革に長く携わってきた村井満氏がチェアマンに就任すると、サッカー界をビジネスの面から支える人材の育成を使命の一つに掲げた。そして2015年、村井チェアマン先導のもと、JHCが設立された。
 
 
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「GM講座で積み上げたノウハウや、選手やコーチ育成でのスキルと経験、さらに、Jリーグと2014年に業務提携を締結した立命館大学のビジネススクールの要素を活かし、Jリーグヒューマンキャピタル(JHC)を立ち上げました。従来はJリーグ内部向けの研修でしたが、それを一般の社会人に向けてオープンにしたのが最大の特長です。サッカー界に限らずプロスポーツ界では、ビジネスに関して“クラブ経営のプロがいない”という共通の問題を抱えています。将来のスポーツ界を担う経営幹部候補生を広く募り、ゼロから育成することを目的としています」
 
 
文/笹原風花 撮影/ヤマグチイッキ