組織の力

2016.07.08

スポーツ×ビジネス Jリーグが率先する新たな挑戦!

Jリーグマネージャー育成カリキュラムにみるリーダーの資質

2015年、公益財団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は、立命館大学と連携して人材開発事業「Jリーグヒューマンキャピタル(JHC)」を立ち上げ、サッカーをはじめ日本のプロスポーツ界を担う人材の育成に本格的に着手。Jリーグヒューマンキャピタルグループマネージャーの中村聡さんに、スポーツ界におけるビジネスの課題や求められるスキル・人材像について伺った。

プロサッカークラブは零細企業!?
その経営に求められる手腕とは?

1993年に開幕し、今年で24年目を迎えるJリーグ。1リーグ10クラブでスタートし、現在では3リーグ53クラブが加盟している。クラブの設立経緯はさまざまで、企業のサッカー部が母体になったクラブだけでなく、有志によりゼロから立ち上げられたクラブも少なくない。親会社の有無もあり、経営規模は2億〜60億、社員数は数名〜100名程度とクラブ間に幅があるが、大きなところでもいわゆる“中小企業”の部類に入る。ビジネスの観点でとらえると、Jリーグのクラブの多くが零細企業だと、中村さんは言う。
 
Jリーグのサッカークラブの経営は、主に企業や個人からの出資とチケットやグッズ販売で得た収益を元手に成り立っている。支出面は選手やスタッフへの給与をはじめ、試合などに伴う移動費や遠征費、宿泊費、施設・設備代やグッズの制作費など多岐にわたり、経営は決して楽ではない。また、経営においては、一般企業と大きく異なる点がいくつかある。
例えば、出資者への利益の還元は期待されない。収益が上がってもチームの成績や人気が低迷していては意味がない、と見なされる。ファンやサポーターからすれば、「出資者へ還元する金があるなら、良い選手を取ってこい」というわけだ。
 
各クラブの存在は地域(ホームタウン)と密接につながっており、地域の公共財としての側面が強い。「地域の発展・活性化のために存在している」というのが大前提にあり、サッカーをはじめとした諸活動を通して地域にいかに貢献し、価値を還元できるかが問われる。収益とはまったく別の観点で、「子どもに夢を、お年寄りに元気を与え、地域を活性化させ、地域住民に愛される存在たるべき」という地域振興の使命を担っているのだ。
それを端的に表すのが、サッカークラブの名称だ。「川崎フロンターレ」「サンフレッチェ広島」など、必ずホームタウンの地名が入っている。母体となる企業の有無に関わらず「企業名は入れない」というのもルール。
近年、「北海道日本ハムファイターズ」などとプロ野球球団がチーム名に地名を入れるようになったのは、Jリーグの影響によるものだ。
 
公共財としての要素が強いとはいえ、経営が傾き倒産してしまっては意味がない。チケットを販売し、ホームスタジアムに人を集めなければならない。チケットを売って収益を上げるというビジネスモデルを支えるためには、「良い選手と優れたプレーだけでは不十分。どう見せていくか、アピールしていくかが重要」と中村さんが言うように、メディアを通じた効果的な情報発信、エンターテインメントの価値の提供といったことが求められるのだ。
 
さらに、規模が小さいクラブではとくに、経営者であってもさまざまな業務をこなす必要がある。マーケティングから資金調達や投資判断、リスクマネジメント、宣伝・広報まで、幅広い知見が必要だ。加えて、経営規模に関わらず知名度は高いため、チームの勝敗や選手の行い一つで良い反響も悪い反響もあり、経営者への風当たりはきつい。例え“零細企業”と称されようとも、背負うものは大きいというのが、クラブ経営者たる者なのだ。
 
 
文/笹原風花 撮影/ヤマグチイッキ
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