リサーチ

2016.06.13

職場のグローバル化に立ちはだかる、部下の離職問題

後任への“引き継ぎ”が困難な日本

日本企業の管理職からは「海外現地人材はすぐ離職する」といった声がよく聞かれるという。それもそのはず、海外では若手でも転職・離職が当たり前であるからだ。

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リクルートワークス研究所による、中国・タイ・インド・アメリカ・日本の5か国の企業管理職を対象にした調査研究「マネジャーのリアル ―仕事とキャリアの国際比較」で、興味深い事実が浮き彫りになった。「部下の離職率」は日本がダントツで低いのだ。隣国の中国でさえ、14.8%。対して日本はわずか5.2%だ。また、その他の統計も比べてみると面白いことがわかる。日本の管理職の置かれている状況はアメリカのそれに近い。下のグラフによると、アメリカと日本は部下の数は企業規模を問わず、3〜7人と少ない。中国は10〜30人、タイ・インドは20〜120 人と部下の数が多い。部下なし管理職率はやはりアメリカと日本が高い。つまり部下の数に対して管理職が他の国より多いのだ。しかし部下の離職率はアメリカの方がはるかに高い。アメリカの管理職たちは部下が離職しても問題なく仕事を続けるために、何をしているのだろうか。


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アメリカと日本はさらに「仕事の成果・役割の明確さが低い」という共通点もある。

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違うのは、管理職のマネジメントの仕方だ。下図では、各国の突発的な業務、定型的な仕事の多さの違いが見て取れる。インド・タイ・アメリカは、突発的な業務が少なく定型的な業務が比較的多いが、日本や中国では非定型的業務が多く業務の不確実性が高い。アメリカでは、前例やマニュアルに従う定型化された仕事に注力する職場環境にある。これが、人が入れ替わっても支障なく回っていく仕事を可能にするのだ。
対して中国は、日本のように業務の不確実性は高いが、仕事の役割や成果は明確化されている。そのため、自分たちが何をすべきかが非常に見えやすい。これも人が入れ替わる前提で成り立ったシステムなのだろう。

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日本は「業務の不確実性が高く」、また「仕事の役割や成果が明確でない」。職務を明確にしないことによって、業務上に生じた不確実性への自主的な対応を可能にしているといえる。しかし、それによりさらなる突発的な業務が増えるという結果にもなっている。これではもし部下が辞めてしまったら、マニュアル化されてないためその部下の仕事の引き継ぎもうまくいかず、後任を素早く効果的に業務に回すこともできず、時間と労力ばかりがかかる。

そんな日本式の管理の仕方では、今後グローバル企業の未来は暗い。「人は入れ替わるもの」。それを前提として、業務をマニュアル化し、役割を明確化する。そして人が回るようにする。それがこれからのグローバルな管理職に求められる能力なのだ。


(出典)「マネジャーのリアル ―仕事とキャリアの国際比較」(リクルートワークス研究所)をもとに作成

作成/MANA-Biz編集部